読破

和辻哲郎  人格から間柄へ (再発見 日本の哲学)

和辻哲郎 人格から間柄へ (再発見 日本の哲学)

和辻哲郎も色々面白いこと考えてたのだなぁ.以下の引用部に大満足.

「世の中」という日本語について
即ち「よ」とは人生であり,世界であり,人間社会であり,歴史的に変遷するものである.「なか」は空間的にも意味の上でも中,内,を意味すると共に,「in」という言葉の有せざる意味,即ち「交り」「ならかひ」「間柄」を意味する.「男女のなか」「なかが悪い」等.即ち人と人との間に「中間」があるといふことは,人の孤立を意味せずして,両者の交渉関係を意味する.
そこで「世の中」とは,世のなか,うちといふのみでなく,「世に於ける人と人のなか」を意味する.だから,「世をまだ知らず」といふのが恋を意味する如く,「世の中をまだ思ひ知らぬ」といふ用法もある...
「人間」といふ言葉は本来はこの「よのなか」を意味するのであつて,孤立した個々の人を意味するのでない.文字通り「ジンカン」である.「人のあひだ」である.

それにしても,随分仏教について詳しく書かれた著作だなと思っていたら,何と著者の本職はお寺の住職らしい.なるほど...