遊んでこそ

2010年が終わってみて初めて気づいたんだが,僕は昨年,有給を3日しか使っていなかった.これは異なことである.
なぜなら,アメリカ時代僕は毎年夏には1カ月,冬には2週間はボスに休暇を告げて日本に帰っていたからだ.つまり,少なくとも年間で50日くらいは遊び呆けていたことになる.

日本に帰ってから,同僚たちからはよく「それであんな論文を書くなんてすごいですね〜」と言われる.でも僕は逆だと思っている.遊んでいなければ,あの論文はきっと書けなかっただろう.

経験上,そしてラッセルやポアンカレの著書を読む限り,何か新しいアイデアを思いつくのは実験室やオフィスの外にいるときが多いと思う.実験が行き詰っているときに,今やっているのとは違うアプローチを試してみようという気になるのも,やはり実験室の外にいるときだ.四六時中働いていては,そういう思考の切り替えが難しくなってしまい,その結果,馬車馬のように働いて,得るのは面白みのない論文1報,ということになってしまう.実際,日本人は沢山論文を書くが,日本人の論文が他の論文に引用される数は少ないのだ.良い仕事を成し遂げるには,却ってよく遊んでおいた方がいいのだ.

そういう信念を持ってきたはずの僕だったのだが,やはり周囲の雰囲気に流されてしまったのだろうか.昨年はよく働いてしまったんである.これはいけない.

楽しく働き,楽しく遊ぶ.学生時代ならいざ知らず,大人になったならそういう生き方を追求したいものである.