よく言われていること

寝る間も惜しんで研究に没頭できるような人じゃないと研究者には向いてない、ってセリフを、これまでに何回か聞いたことがある。もしかしたら、僕自身も若い頃はそんなことを言ってしまっていたかも知れない。

でも、多分、違うね。

働きアリのように実験しまくって、100本の論文を書いても、いや、Cell・Nature・Science級の論文を10本書いたって、恐らく歴史には名前も残らないんである。まあ記録は保存されると思うけど。

歴史に名前を残すなら、それこそノーベル賞級の成果を出すとか、責めて教科書に載るような研究をしなきゃいけないんだけど、そういうのって、大抵はたった1本の論文で決まっちゃったりするわけで。

それに、これは今まで何回も書いたことだと思うけど、実験三昧の生活をしてると、無意識による閃きが、意識に昇ってこなくなってしまうんである。閃きというのは、一定期間ある物事に集中した後、全く別のことに意識を向けておく時間を作った方が、圧倒的に起こりやすいんである。

だから、研究者といえども、畑違いの本を読んだり、恋をしたり、ドライブに行ったり、音楽をやったり、そんな感じで人生を楽しんでいる方がいいと思う。その方がまず幸福な人生を送れるし、歴史に残るほどの研究ではないにせよ、それなりにブレイクスルーを起こすような成果に繋がりやすかったりするのだ。そんな研究人生の方が、100本の論文を書いても、歴史には残らない孤独な研究者になるよりは、よっぽど素晴らしいと思う。

そして、あわよくば!

教科書に載るような、永く人の記憶に留まるような、そんな研究が出来たら、最高なんだけどね。