Tips from the Top

↑見出しのリンク先は、サイエンス誌で行われた、今年のノーベル・ウィナーのインタビュー。
傑出した研究成果を出すための8のポイントで、共通する項目が日本語で纏められている。

1. 本当に重要なことに取りくめ。自分がその問題を解いた時に、自分自身を誇りに思えるようなテーマを選べ。

2. 保守的になったり臆病になったりするな。こまごまとした成果を積み上げるやり方ではだめだ。

3. リスクはとらなければいけない。決して安全で退屈な道を歩くな。

4. 自分が行っている研究の分野にとことん精通しろ。

5. 周りの研究者から自分が主張する説を否定されたとしても、怖じ気づくな。その研究分野の権威が言っていることを否定するような成果を上げるくらいが良い。

6. プレゼン能力を磨け。突出した研究成果を出す研究者は、えてしてライティングも含めたプレゼン能力が高い傾向がある。

7. ハードワーカーであれ。研究時間が9時−5時、週末は休み、という研究スタイルではノーベル賞はほど遠い。

8. 子供の頃から研究の現場に触れさせてもらうべきだ。親が研究者であれば、一緒に科学的議論をするのがよい。

この中でも特に目新しいものと言えば、8の親。っていうかそんなの完全に天運に任せるしかないから、フツーは取り上げられないよね。でも元記事の方では、8番目どころか最初に"it helps to have scientists for parents"って書かれている。。。けれど、そんなの何の参考にもならねえ!笑 まあ僕にとっては、親父が化学者だったことが、僕の進路に大きな影響を与えたのは間違いないけど。でも多くの研究者にとっては、自分に子供が出来たときには出来るだけサイエンスに触れさせるようにしてみようかな、くらいのもんでしかないよね。ま、僕はそういう早期からのエリート教育にはあんまり賛成しないけどね!変に自信付いちゃうことあるから。

リスクは取るべき。特に若いうちに

僕が特に賛同するのは1〜3。人生のうちにリスクを取りやすい時期があるとしたら、それは若いうち。失敗してもやり直し効くから。本当に大失敗をして、研究キャリアそのものがダメになったとしても、若ければまだ別の道で生きていく選択肢もあるわけで。だから海外には是非行ってみるべきだと思う。まず英語が鍛えられるし、何より、「自分がスタンダードだと思い込んでたものを覆される」という経験を積むことが超重要。

日本の農水系の研究機関で本当に最悪だと思うのが、科研費などの外部資金で雇われたポスドクに対して、そのプロジェクト以外の研究活動を行うことを原則として認めていないこと。当然、ポスドクが自分で研究資金に応募することも認めてない。だから自分が雇われているプロジェクトがショボいものだった場合、否応なしに「こまごまとした成果を積み重ね」るハメになってしまう。研究者としていちばん成長できるポスドクの時期を、そんな風に浪費させてしまう今のシステムに対して、僕は憎しみさえ感じる。
 アメリカではこうだった、なんて言い方は全然好きじゃないのだけど、でもジョージアのボスに最初に言われたのは、「あなたのサラリーはこのプロジェクト資金から出してるから、最低限これだけのことはやってもらわないと困るわね。でも、それ以外はあなたの好きなことをやりなさい。もちろん、あなた自身でグラントに応募してもいいし、是非そうすべきよ!」ということだった。この懐の深さの違いが、「日本では論文の数こそ多いけど、インパクトは小さい」って揶揄される一因になってると思う。

でも、だからといって、自分の研究テーマが詰らない、とか言ってる若手のポスドクのことも、僕は大いに不満だ。本当に重要でやってみたいことがあるのなら、組織のルールなんか無視してでも、怒られようが止められようが、裏でどんどん自分の実験をやれよ、と言いたい。そこまでやってみたいと思えるテーマが無いんなら、言われたことを黙ってやるべき。それも我慢できないんなら、研究の世界から立ち去るべき。

うむ、今日はこんなもんにしとこ。明日また続きを書こう。