ラッセルの幸福論「愛情」

二人の人間が真の相互的関心を抱いているという意味での愛情――つまり、お互いを幸福のための手段として見るのではなく、一つの幸福を共有する結合体だと感じる形の愛情は、幸福の最も重要な要素である。自我を鋼鉄の壁の中に閉じ込めていて、上記のように自我を拡大してくことが不可能な人は、たとえどんなに仕事が成功しても、人生のうちの最良のものを逸していることになる。愛情を視界から閉め出してしまうような野心は、多くの場合、人類に対するある種の憤りや憎しみから来る復讐心に他ならない。そうした感情は若いころの不幸や不当な仕打ちなど、被害妄想に至るような原因によって生み出されたものである。あまりにも強い自我は一つの牢獄であって、もしも人生を目いっぱい楽しみたければ、あなたはそこから逃げ出さなければならない。本物の愛情を持ちうる能力は、この自我の牢獄を抜け出した人がもつ特徴の一つである。愛情を受け取るだけでは、決して十分ではない。受け取られた愛情は、与える愛情を解放しなければならない。そして両者のバランスが取れている場合に限り、愛情はその可能性を最大限に発揮するのである。

視界から愛情を締め出すほどの野心。。。身に覚えがあるわー。苦笑