3月末日のこと

ちょっと時間がなくて書けずにいたのだけど、先週の土曜はお袋と、お袋の旦那さんと、僕の両親がアメリカにいた頃に付き合いがあったという老夫婦と5人で一日を過ごすことになった。何でも、当時アメリカで付き合いのあった日本人同士が、10年ほど前から再び交流し合うようになったんだそうだ。で、老夫婦が以前からお袋に「是非あなたの息子さんに会わせてくれ」と頼んでいたらしくて、学会が宇都宮ならちょうど良いから、あんた一日付き合いなさい、ということになったわけである。何でもご主人の方は宇都宮大学の前副学長だったそうだ。そういえばお袋の旦那さんも神奈川大学の元副学長にして前理事だもんな。どうも僕の周りには学界のVIPが多過ぎる気がする。専門が違い過ぎて全然助けてもらえないけど。笑

で、夫妻のご案内により、足利の栗田美術館というところに行って来わけだが、行ってみてビックリした。何で栃木のこんなところに伊万里や鍋島がこんなに陳列されてるのかと。どうも地元出身の不動産屋の社長が個人でコレクションしたものを公開するために作った美術館らしい。コレクションを自慢しているだけあって、並べられている作品に付けられている解説の文章も大げさで、読んでると辟易してくる(苦笑)。でもそこさえ我慢すれば、本当に素晴らしい作品の数々を見ることができる。圧巻はやっぱり柿右衛門。あの大胆な余白の使い方を何百年も前に思い付いたなんてお洒落過ぎる。

昼食はどういうわけか佐野ラーメンになってしまった。宇都宮大学の前副学長と神奈川大学の前理事が肩を並べて1杯600円のラーメンをすすっている様子があまりにもシュールだったなあ。

で、車での移動中に内藤家の歴史のことが話題になったわけなんだが。僕が子供の頃に親父から聞かされた話では、明治維新の後、僕の大祖父・内藤加賀守敬之介三十郎は信頼していた家臣に財産を持ち逃げされて、だから江戸から近江へ文字通りの都落ちに追い込まれたんだということだった。親父はよくその話を引き合いに出しては、だから簡単に人を信用するもんじゃないぞ、なんて言ってたんだけど。
 でも実際は、大祖父は家臣に財産の運用を任せたんだけど、その家臣はその資金をアズキの先物取り引きに投資して、結果大失敗に終わって財産が見事に消えてしまったということだったそうな。親父め、自分の人生観に合わせて話を変えてやがったのかよ。
 それにしても、アズキに人生を転落させられた大祖父の玄孫が、今まさにそのアズキの研究で大当たりを引いているんだから、皮肉なもんである。でも結構そういうところに運命的なものを感じたりするんだよね、人間って。
 例えば元々内藤家の領地だったという新宿御苑。あそこは明治維新後に日本で最初の農業試験場になったりしてたんだけど、それを知った時にも、何か特別な感慨を抱いたもんだ。何せ僕は、農学博士なんだから。