vol.10

彼女と連絡を取りたい,という気持ちが,すぐに起こった.だが,あれから既に4年.お互い連絡先は変わってしまっている.仙台の友人に,彼女の連絡先を教えてくれ,と頼んでみたが,
「前にメールで流したぞ」
しかしワタクシは渡米前にPCを新調しており,そのメールは日本に置き去りにしてきたデスクトップの中だ.ここに来てワタクシは迷った.


今更,彼女に自分は必要なのだろうか…?


四年前の一連の出来事から,
そもそも,既に彼女との関係修復は諦めていたのだ.それが今になって,彼女の不幸に際してまた友達面をするなど,不誠実に思われた.それに自分は彼女にとって「あちら側」の人間.下手に連絡を入れれば,却って彼女の心労を増やすことになるかもしれない.実際,ワタクシと彼女の関係が壊れてしまう前に,他の仲間から掛かってきた電話について,彼女がこんな話をしたことがあった.


「こないだ○○から電話が掛かってきてんけど,話をするだけでも疲れたわ…」


この記憶が,決定的にワタクシを引き止めた.そして,負けた.ワタクシは彼女の連絡先を知ろうとする努力を,諦めることにしたのだ.その決断が意味するであろうことも,よく分かっていた.


本当にこれでもう,友達には戻れなくなるだろうな――


18の頃に出会ってから,彼の一回忌までの4年間を,1人,思い出していた.

…続く