6 法家思想:韓非子2

今日も続く,韓非子のコトバ.今日紹介するのは読んで鳥肌が立ったというか,目からウロコがホロリと落ちたヨ.


むかし,とても正直な者がいた.ある日彼の父親が羊を盗んだんだが,躬はこのことを領主に告発した.しかし領主はその正直者の告発者を「殺せ」と命じたの.君主には正しくても,父親に対して正しくナイと考えたから.かくして正直者は捕らえられて処罰された.以上から考えると,君主の忠臣は、父にとっては不孝者なんだな.

魯の国のたる兵士は,戦に出れば逃げてばかりいた.不思議に思った孔子が,彼にその理由を聞くと「私には老父がおりまして,私が死ねば養う者がおりませぬ」と言う.
孔子はコイツは親孝行者だと感心して,魯国の君主に向かってこの兵士を褒め称え,出世させた.しかしこの事実から考えるに,父にとっての孝行息子は,君主にとっては背臣なんだな.

このように正直者が処罰されることによって,彼の国では悪事が告発されることがなくなり,孔子が逃亡兵を賞したお陰で,魯の兵士は簡単に逃亡・投降するようになり,いずれの国も衰えた.このように,上の者と下の者の利益は異なるんである.それなのに,人の君主たる者が,私的な善行を勧めておきながら,国家に幸福をもたらそうとしても,絶対叶わないだろう.

昔,文字が作られたとき,自分を囲む形(ム)を以って「私」とし,「私(ム)」に背く形(八)を以って「公」とした.公私の利益が相反することは,大昔に人間が最初から知っていたことなのだ.それなのに今,公私の利益が一致していると考えるのは,無知による災いというものであろう.


うおおっ漢字ってスゲエ!!なんて感動したワタクシですが…ダメ? ま,ソレはヨシとして,モヒトツだけ韓非子のハナシを.


今,国の民はみな政治を論じているけど,国は貧しくなる一方だヨ.農業を論ずる者ばかりで,実際にすきを取って耕作に励む者が少ないからネ.民は皆軍事を論じ,孫子の著書を持っている者が一家に一人はいるけれど,軍は弱くなる一方だヨ.軍事を論ずる者ばっかりで,実際に武器を持って戦う者が少ないからネ.

だから優れた君主は民衆の労働力は使うけど,意見は聞かナイ.功績には褒美と官位を与えるけれど,無用な議論は禁止.こーすれば民衆は,死力を尽くして君主の命令に従うようになるのサ.

そもそも耕作や肉体労働は骨の折れるモノ.ソレでも民衆が田畑を耕すのは,そうすることで富を得られるからだよネ.戦争となればとってもアブナイ.でも民衆が戦に出て戦うのは,そうすることで位を得ることができるからなんだよネ.ところが,もしも学問を修め弁論を磨けば,耕作をせずに富を得ることができ,戦の危険なくして出世することができるなら,一体誰が耕作し,武器を持って戦うと言うのかネ? こーして,百人が知識の仕事をし,肉体労働をしているのは一人ダケという国ができる.知識の仕事をする者が多ければ法は破られ,肉体労働をする者が少なければ国は貧しくなってしまう.コレが世が乱れる理由なんだヨ.

だから優れた君主の国では,人々は書籍を持たず法律を教えとする.古代の賢王の言葉は伝えられず役人を師とする.勇猛さは私闘に発揮されず敵兵の首を斬ることが勇敢とされる.こうすれば国内の民は,議論をするときは法律に従い,肉体労働は国に対する功績となり,勇気は軍のなかで発揮する.だから平時には国が富み,有事にも軍が強い.富を蓄え,兵を強くし,敵国の隙に乗じる.これこそが,過去の偉大なる王達を超える徳を身に付け,功績を果たす手段である.


↑コレさー,読んでてビックリしたよ.イタリアルネッサンスの時代に生きた,マキアヴェッリの「君主論」と同じコト言ってるじゃないすか.時代的には大体マキアヴェッリを遡ること1700年ってトコロすかネ.


ま,韓非子の思想は大体こんなカンジでした.明日は法家と帝国「秦」の関わりをサラッってみようかなと.ではではー.