昼頃にカリールがランチを食べるために家に戻ってくると,アヌーが起き出してきたところだった.カリールが部屋の臭いはどうだと聞くと,アヌーは今日もひどい臭いだと言う.様子を見るために二人でアヌーの部屋に行ってみると,確かに悪臭が漂っていた.動物の肉が腐ったような臭いだった.
カリールはその臭いがどこから漂ってくるのかを調べ始めた.アヌーの部屋は家の二階の端にあって,三面は外に面していて,一面が隣の部屋とを仕切る内壁だ.腐臭は外からではなく,隣の部屋に面したその壁の隙間から入り込んできているようだった.アヌーの部屋の隣にあるのは・・・


エヴァンの部屋だった.


カリールはドアをノックし,エヴァンの名を呼んだが,返事は無い.開けようとしたが,ドアには鍵が掛かっていた.ドアに耳を当てた.テレビの音が聞こえた.


「Oh, my goodness...」


カリールは一階に住んでいる大家を呼び出し,エヴァンの部屋の合鍵を出してくれと言った.彼が部屋で自殺しているに違いないと.大家は他人の部屋の鍵を勝手に渡すことなんか出来ない,と言ったが,カリールは確信していた.だったら警察を呼んで欲しいと言い,この三日間誰も彼を見ていないこと,彼の部屋から腐臭が漏れていること,部屋には鍵が掛かっているが,テレビが付けっ放しであることを説明した.


・・・続く