土曜日

アメリカから帰国。はー、しんどかった。。。 意外と英語力は落ちてなくてそんなに苦労しなかったけど会議の形態とかコンセプトがなぁ。。。野生種の利用ありきって感じだったし。違うだろ、野生種を利用するためにGenomicsやPhenomicsをうんたらかんたらするんじゃなくて、何のために野生種の利用が必要なのか、それはどうしてか、っていう議論がまず大事だろ、と思いっぱなしの3日間だった。そう、会議は3日しかなかったのに、移動を含めると6日掛かりになっちゃうんだもんね。。。アメリカって遠いわ。西海岸でさえ。。。よくジョージアなんかで4年間も暮らしてたなぁ、僕。

でも、今回の会議に出たこと自体が、また色々考えるキッカケにはなった。これから僕らが本当に解決しなきゃいけない問題は何か。そのために何が必要で、何が障害になってるのか。ジーンバンクのそもそもの使命とは何だったのか。現実のジーンバンクはその使命をどれくらい果たせているのか。果たせていないなら何が問題なのか。それらの問題を解決することは可能か。可能だとするならどういう道があるのか。。。

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個人的な収穫としては、国際的にイネ研究をリードしてるような存在であるSusan McCouchという人の、人間に触れることができたことかな。自分もイネの研究に携わってたことがあるし、だからの彼女の論文は結構読んでたんだけど、何でアメリカ人なのにイネの研究ばっかやってんだろこの人は、ってずっと思ってたんだよね。だから思い切って聞いてみた。そしたら

「大学院に入ったときに、『アメリカでは大事でも何でもないけど、世界のどこかでは重要な役割を担っている作物をやらせて欲しい』って言ったの」

思わずWow!って言っちゃったわ。そういう精神、大好きだもの。McCouchは続けて曰く、

「元々は歴史をやってたんだけど、学生時代にマサチューセッツからアルゼンチンまでヒッチハイクで旅をして。そしたら色んな国の色んな地域を見れるでしょ?旅が終わったときに、食を支える作物の研究をしなくちゃって思ったわけ。それで、イネをやるようになってから初めてアジアを訪れるようになったけど、それは自分にとっては全く新しい世界だったわ。元々はちょっと違うことがやりたくてイネを始めたわけだけど、現地の人や分化に触れるうちに、本当にイネが好きになったわ」

いや、本当にいい話が聞けたと思ったね。やっぱ大切なんは原点だよな、原点。そもそも何故にこの研究をやることになったのか、そして今も続けているのか、っていう。自分の中にストーリーを持っている人は、強い。

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少し話は変わるけど、今回の会議に僕ら日本人が参加していることをMcCouchは本当に喜んでいた感じだった。曰く、「日本の研究者ってこういう場には本当に出てきてくれないもの」と。確かに、今現在彼女が率いているプロジェクトには10カ国くらいの研究所や大学が参加していて、そこには中国も韓国も入ってたのに日本は入っていない。。。うーむ、と考えてしまった。

僕がいる研究所には彼女らのプロジェクトが使っているものなんかより遥かに丁寧に整備された材料があって、だからそれをこの人たちに利用してもらっていれば、恐らく今彼女たちが手にしているよりも遥かに素晴らしい成果が上がっていたはずだ。十数カ国の様々な条件での栽培データが取れるのだから。なのに日本はそれをせず、多分、結果的に世界から取り残されてしまいつつある。。。なぜ? 

どうも歴史的に日本は1度の成功で調子に乗ってしまう傾向がある感じがする。太平洋戦争しかり、高度経済成長期しかり。。。イネの研究でもそう。確かにイネゲノムを解読したのは日本主体の研究チームで、だから日本は完全に世界のイネ研究をリードする立場に立った。でもその立場に固執する余り、ノウハウや材料の流出を恐れて内輪だけで囲い込んでいった結果、完全に世界から孤立してしまった。McCouchのプロジェクトに比べて、日本で行われているイネ研究の何とせせこましいことか。。。

いずれにせよ、McCouchの哲学は見習おうと思った。研究はオープンでなければならないし、サイエンスには国境なんて関係ないのだから。