土曜日

島根に行ってきた。アズキの育種を始めようとしている学生時代の同期はエスミくんと言うのだが、このエスミくんとは実はちょっとした因縁があったりして。その因縁というのが。。。

京大の学生は学部4年のときに研究室に配属されるわけだけど、定員は一研究室につき四人まで。で、僕が入りたいと思っていたラボには僕やエスミくんを含め5人が希望した。それで、教授と志望学生5人とで話し合いによる決着を付けることになったわけだが、僕たちは結局人が好いエスミくんを犠牲にして、自分たちの希望を通すことにした。それからというもの、僕は彼に対しては何だか気が引けてしまって、しかも僕自身が大学院進学後はほとんど京大に居なかったこともあって、一度も口を聞くことはなかったのだった。

しかしあの因縁の研究室配属事件から12年が過ぎた今、まさかアズキの研究で協力し合うことになるとはね。エスミくんも、最初に僕にメールを送ったときには本当にドキドキしたらしい(笑) 

空港にはエスミくんが自ら迎えに来てくれて、まずは島根大で農学部の教員を相手に僕の研究の話をする。みなさん島根を何とかしようと盛り上がっておられた。で、アズキの育種をするんだったら僕のイチオシはコレです!と、アズキの大きさを2倍にする話をしてみたのだが、エスミくん以外はイマイチな反応だったりして。

うーん、どうしてだろう。何故か研究者にこの話をすると、いつも反応がニブいんだよなー。アズキをデカくしてどーすんの?とか、そんな需要あるの?とか、真顔で言われることが多い。僕はその度に、今までアズキの育種がどれだけ種子を大きくする方向で進んできたか、丹波の黒大豆が高値で取引されるのはデカいからでしょ、と言うんだけども「あー、まあ、そうかもね。。。」とあんまり納得してもらえない。あれー?アズキが2倍の大きさになるって凄いことだと思うんですけど…?

会合が終わってから、再びエスミくんに出雲大社と出雲歴史博物館に連れて行ってもらって感極まったあと、もう一つの目的地である和菓子屋さんにお邪魔する。ここの主人はエスミくんの高校時代の同級生らしい。へえ。つまりその場に会した僕、エスミくん、和菓子屋の主人の3人は同い年。いいねえ。。。
 ご主人は僕に2種類のアズキの種子を差し出しながら、「これがウチで契約している農家さんが作ってくれているアズキです。もう一つの方が、いわゆる丹波大納言なんですけど」と言う。手にとって見てみると、契約農家産のアズキの方が明らかに大きい。「えっ、デカいですねこれ?これってここの農家さんが独自に交配して育てた品種とかだったりするんですか?」「いや、確か3年くらいまえに丹波大納言を持って来られて、それをこの方が工夫しながら栽培されてるということなので…」「あー、じゃあこれも遺伝的には丹波大納言そのままなんですね。でもこれを仕入れて使っておられるってことは、やっぱりアズキは大粒の方がいいんですよね?(ニヤリ)」
 で、その場で僕は店の主人にスマホで撮った写真を見せながら(http://twitpic.com/c9x5e8)、「僕は去年、マメの大きさが2倍になる原因を突き止めたんですよ。元々がコレで、2倍になったヤツがコレです。んでね、これをアズキに応用したら、多分アズキも2倍になると思うんですよ。今使っておられるこのアズキはかなりの大粒ですけど、これが更に2倍になるとしたら、どうですか?」と言った途端、彼の目の色が変わった。「そんなことができるんですか!いつできるようになるんですか!?いや、まさかそんな夢のような話が聞けるとは思わなかった!!」と。「でしょ?そーでしょ?ねえ?いいでしょう?な、エスミくん!これは絶対やらなあかんで!」

というわけで、超大粒アズキ「大小豆(笑)」はネタになるどころか、キョーレツなニーズがあると確信することができた。島根大で一致団結して動いてくれることを願うけど、足並みが揃うには結構時間が掛かるかも知れないな。。。いずれにしても、僕はこのネタを実現して世に送り出すと改めて心に決めた。うん、絶対出す。