水曜日

所内の競争的研究資金に落選してしまった。ポスドクくんたちと延々議論をして書き上げた自信作だったのに。

メールで残念なお知らせが届いてすぐに、理事長室に駆け込んだ。今回書いた内容の方針で来年度の外部資金を獲得してやろうというつもりだったので、内容のどこに問題があったのか教えてもらいたかったのだ。

「教えてください理事長、内容に改善すべき点があったのなら、それを次に書く申請書に活かしたいのです」
「いや、君のところには既にお金があるし、所の予算も限られているので他の人にところに出してあげようということになってね」
「ええ〜っ、そんなぁ〜」
「内容に問題があったと言うよりは、さっきの審査会では君の案件については内容は全く話題に上らなかった。君にはお金があるから」

ということで、最近の努力が空振りに終わってしまったことに結構落胆したのである。昨日はしょうがないかと思ったんだけど、今日になってもまだどこか気分が晴れなくて、ああ思った以上にショックだったのだなと自覚した次第。

ジーンバンクというものの存在価値を飛躍的に高めることのできるアイデアのはずなんだけど。それこそ、これまでとは次元が違うってくらいに。今あるお金じゃそれを実現できないから、出したんだけどなー・・・

とか言ってる間に来月また申請書の締切だ。もう一度魂を削るほどの文章を書かないと。気合いれろー

先週金曜に後輩が遊びに来た。いちおう、学振PDの受け入れ先候補の一つという形で。

で、事前に「内藤さんのところで研究することについてどう思うか」、と3人の人物に相談してみたらしい。その結果、何と3人共がネガティブな回答をしたと言うのだ。

な、なんだってー??( ̄□ ̄;)!!

1人は僕もよく知ってる人物で、完全に僕に対してアンチな人だからまあ仕方ない。

2人目は、「彼のところは彼が異様に目立ってるから、自分が何か成果を出しても、周囲には彼の成果だと思われてしまう可能性が高い。自分だったら行かない」と。

う、うむ、、、そういうリスクはあるかも知れんけど、、、少なくともオレ自身は、共同研究者や部下らの研究は最大限評価されるよう努めているつもりなんやけどな。というより寧ろ、オレは手柄は共同研究者やポスドクや学生に譲るべきやと考えてて、実際これまでもそうしてきてるんやけど、、、まあそんな細かいところが他人に伝わってるはずもないか。ほとんどの人はプレゼンしてるオレの姿しか見たことないもんな。そしてプレゼンしてるオレは、オレであってオレでない、というか、単にオレが理想とするプレゼンターの姿を演じているだけのオレ(笑)。どうでもええか。

そして3人目が大問題。「彼はとあるプロジェクトの年度末評価で『2』を付けられてる。普通はどんなに悪くても3止まりで、滅多なことじゃ2なんて付かない。あのラボは上手くいってないんじゃないか」と。

うわ、最悪や。。。年度末評価って表に出るものじゃないから実害はないと思ってたけど、上の方では噂は流れてしまうのか。。。メッチャ実害あるやん。でもあの評価は評価委員が問題で、思いっきりオレらと利害関係にあったんよ。で、オレらの方向性を自分に有利な方へ誘導しようとしたのを断った結果が、「2」になったっちゅーわけや。しかもプロジェクトそのものをいっぺん打ち切られかけたしな。。。よし、実際プロジェクトがどれくらい進んでるかお前に見せてやろう。。。とまあこんな感じやけど、どう思うよ?

「順調にしか見えないですね」

やろー?ほんま最悪の評価委員に当たったと思ったけど、その影響は思った以上に広範囲に及んどるなぁ。。。まあ今年実際に成果出して払拭するしかないか。

後輩くんはそのままウチに泊まってくことになって、何と午前4時まで色々と語ることになってしまった。多分彼の中では「何か凄い先輩だとは思うけど裏では色々言われてるし、実際にはどうなんだろう?」みたいな感じに思ってたんだろうけど、僕がそんなに悪い人間じゃないよってことくらいは伝わったかしら。

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後日、このエピソードを共同研究者に話してみたら、

「えっ、ほんとですか!? いやー、そんなところまで話が広まっちゃうんですねえ。。。実は黙ってたんですけど、昨年度の評価も2だったんですよ。これ内藤さんに言ったら血管切れちゃんじゃないかと思ってこっそりしまっておいたんですけど(笑)」

あー、全然予想通りです。ていうか僕もうあの人に対してブチ切れたりしませんから。こないだあなたに「根に持つタイプなんですね」って言われたお陰で目が醒めましたから(笑)。

「そうなんですか。僕の方は内藤さんにあんなことを言っておきながら、実は僕自身も結構根に持つタイプだったのかも知れないなと思ったんですよね。。。実際あの人の言葉を結構憶えてる自分に気付いて、結構腹も立ってきちゃって(笑)」

立場逆転してんじゃないですか(笑)。何にしてもこうなってくると、少なくともちゃんと論文出して成果をアピールするまでは、予算も通りにくくなってしまったりするかも知れません。。。ま、成果さえ出しゃあ済む話なんですけどね!

「ですね。僕たちの研究が上手くいってないとか思われてるなんて心外ですよ。これは燃えてきました!」

おおっ、マジっすか!(笑) ですよね、やってやりましょう!見とれよアイツら!!

ということで、逆境って本当にチャンスになり得るんだなとあらためて思った次第。実際、今の僕も燃えている。触れると火傷しちゃうかもよ!

水曜日

新年度始まり。今日から外作業も始まり。ビニルハウスに土を運び込む。20kgを200袋。運び込んだら鉢やバケツに土を詰める。明日も土詰め。金曜に種蒔き。昨年度からやり残しになってしまったデータ解析を急ぎで終わらせなきゃと思ってたんだけど、それにカマけていたらいつの間にか書類とか出張とか講演依頼とかが目の前に迫ってきている。。。ちょっと体調を崩すとたちまちアレルギー症状が爆発してしまうこの時期に忙しい、というのはなかなかに辛いのである。

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僕がやりたいと思っていたことと、ポスドクくんたちがやろうとしていたこととの間に随分齟齬があることが発覚した。一昨日、昨日、今日と3日間議論に議論を重ね、ようやく全員が妥協できるポイントに辿り着いた気がする。やりたくないことをやらせるわけにはいかないけど、でも、譲れない一線もあるわけで。

ジーンバンクの、遺伝資源の、本気を見せたいわけですよ。世界中にさ。

火曜日

あんまり疲れが溜まってしまったので明日は休暇を取ることにした。午前中は寝まくる。。。とか言いつつ、油断して夜更かし。。。

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嫁の大伯母が亡くなったそうだ。88歳。冥福を祈る。

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日曜は作物学会に顔を出してきた。部下の発表は60点かな。ある程度興味のある人にはズドンと伝わったみたいだけど、そうじゃない人に対してはそこまで伝わらなかったんじゃないか。あと最後の締め括りがもう完全にグズグズになってた。締め括りは本当に難しいので、しっかり考えて何度も練習しとかなきゃ格好つけられないぞとあれほど言っといたのにねえ。

去年招待してもらった縁があるので、作物学会の若手の会にも顔を出してみると、自分の研究環境とか目標とかそういうテーマで話を咲かせる会だったようだ。話を振られたり聞いたりしてるうちにちょっと思う所があったのだけど、それを書くのは明日にする。

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人事異動で明日からウチのラボに1人増員されることになった。今日挨拶に来てくれたんだけど、いい人そうで良かった。むしろウチのオフィスの汚さに向こうが不安になってしまわなかっただろうか(苦笑

とにもかくにも、部下たちの連携も密になってきて、やる気満々な感じだし、2014年度はちょっと爆発しちゃうんじゃないかと期待は大いに膨らんでるわけです。忙しさに倒れてしまわないように、身体にだけは気をつけよう。

木曜日

結構凄い勢いで申請書を書いてた。ぶっちゃけ構想を2日で捻り出したのは初めてだけど、パートナーもこれは面白そうですねと言ってくれたし、あとは文章だけ手直しをして提出してしまおう。
職場内部での競争的研究予算だけど、年800万✕2年だからな。バカにはできない金額だ。

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共同研究扱いで沖縄の機関にやってもらっていたデータが半分出来たらしい。連絡のついでだか何なのか、来年度も引き続きやらせて欲しいとの驚愕のオファーを頂く。ありがたやー

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学会の懇親会で、東大農学研究科の院生向けリレー講義のオファーを頂く。ありがたく引き受けてアピールさせてもらおう。リクルーティングは大事ですもの。
> 日程:4月24日木曜日
> 時間:木曜5限(16:40〜18:20)
> 場所:東大農学部1号館地階5番講義室
だ、そうである。
講演タイトルは「Vigna属野生種の研究〜ワイルドはセクシーだ!〜」でいこうと思う(笑)

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秋の学会のワークショップ申請締切が4月下旬なので、春の学会が終わったばかりなのに招待スべきスピーカーを選ぶ。今年秋の若手の会主催によるワークショップは「ワイルドはセクシーだ!」というテーマで、とにかく変わった野生植物を扱っている人たちばかりを4人集める予定。感じで相談しつつとりあえず4人の候補を挙げて、メールをしてみたら全員から速攻でOKの返事を頂く。モデル植物をやってたんじゃ絶対出会えない特徴をもった植物たちのお話、乞うご期待!

火曜日

学会ウィーク終了。育種と植物生理は両方行く人も多いんだからもうちょっと日程調整して欲しいよね、全く。

発表は大いにウケた。再来年にリクルートしたいD1の学生くんにキョーレツな印象を残せたみたいで、良かった。でも、その学生くんの発表もまた僕に強い印象を残したのでした。絶対来て欲しいな、彼には。

その学生くんの後輩の発表もついでに聞いていたのだけど、彼の結果が、大発見を匂わせるものだった。でも、本人とその周辺の人たちはどうやら全く気付いていなかったようなので、迷わず手を挙げて質問とコメントをした。

翌日、その彼が僕に話しかけてきて、
「内藤さんの言った通りでした。あれ、○○です」と。
うおー、キミ、やったなあ!凄いことやで、それは!!
「えっと、でも、、、何が凄いんでしょうか」
そうか、ならば説明しよう。かくかくしかじか。
「はっ、それは面白いですね。凄く面白いですね!」
やろ?これからも是非頑張ってくれ!続報に期待してるから!!

で、後でD1くんから聞いたところによると、彼はまだ学部の4年生で、でも僕に声をかけられたりアドバイスを貰ったことでメチャクチャやる気になってるらしい。彼がもしこのまま研究の道に進んでくれるようなことがあったら、僕の貢献も大きいよね(笑)

でも、実際そーだっただろ。僕だって学会に参加し始めたばかりの頃は知り合いも誰もいなくて、でも発表した後に誰かが「君の発表は面白かった」とか声を掛けてくれたりしたときにどれほど嬉しかったことか。誰かに認めてもらえたことで、どれだけやる気が湧いたことか。そういう経験が何度か重なったことも、僕に博士課程への進学を決意させた要因になってたはずなんだよ。

だから、よーするに、一般講演だって大事だろって話です。

それにしても、富山の魚と酒はウマかったなあ。

土曜日

昨日は千葉大へ。共同研究の打合せと、共同研究の申し込み。去年の12月頃から始まった共同研究については、正直期待はずれかなと思ってたのだけど、今後に向けてかなり改善の余地があるようだった。言っていたことが本当に可能になれば、かなりカッコ良いデータが取れそうだ。気分よく継続をお願いする。

そして申し込みの件。ポスドクくんが「千葉大の○○研究室の技術があれば、あんなことやこんなことが出来ると思うんです」と繰り返し言っていたので、今回千葉に連行したのである。だったらお前話を付けてみろ、と。

そして会合の結果、先方は大変興味を示してくれたのである。しかも「それくらいなら2週間くらいでできると思います。」と。

おお、やったな!

…と言ったところで、ハッと思いついたのである。

「あの、ついでに伺いたいんですが、こういうのってできるでしょうか?」

「ああ、それは新しいし、インパクトがありそうですね。お金も取れそうだ(笑)」

…革命的だ。凄いことになるぞ、これは!

そして今日、職場に言ってみるともう一人のポスドクくんが居たので、昨日の成果は上々だったぞ、と伝える。

「お、良かったですねえ」

という感じだったので「あのさぁ、あれが出来るとなると、つまり最終的にはこういうものが出来上がるっちゅうことやろ?」

と言うと、表情が「ハッ」となってた。「それ、メッチャクチャ凄いじゃないですか!」

「そやろ?ほんまに革命的やぞ」